昭和9年(1924)から50年にわたる法隆寺昭和の大修理の棟梁であった名工、日本一の宮大工と称された西岡常一さんは、
「人に聞いたことはすぐ忘れる。大事なことは木と相談してやりなはれ」
と言って弟子を育ててきたという。木の使い場所の条件を調べ、木の状態を観察し、自分自身で判断してやれということである。人の判断の結果を聞いてもそれはすぐ忘れる、そして次の自分の判断材料とはならないということである。試行錯誤するということが、学習上重要な意味を持つということである。
このことは、脳行動学でも重要なポイントである。自覚的・探究的に行動してきた人間の脳のネットワークは、情報を分類整理しながら、関連付けながらつくられていく。それらの記憶を条件に応じて組合せることによって、応用も利くし、新しいことも生み出せるのである。
それにしても、その道の達人は、人間の行動を見ることにおいても達人なのだと感心させられる。
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