2016/09/14

33 失敗を修正することによってしか、できるようにならない 

 7年前の最後の回は、失敗に関するもの。再開第1回も同じテーマにしました。
 日本人は失敗がきらいです。失敗しないようにと、行動が委縮しがちです。
 ですから、このテーマについては、何度でも、いろいろな角度から考えてみる必要があると考えています。

★失敗―修正の積み重ねでできるようになる


 行動することによって学ぶなどとよく言われるが、行動すれば即できるようになるかというと、そうではない。始めは、ほとんどの行動の場合失敗する。それを少しずつ修正していくことによって、正しい働き方をするための神経回路が成立し、行動できるようになる。

 たとえば、ご飯の食べ方。生まれたときは、おっぱいを飲むことしかできない。それを時間をかけて、離乳食から幼児食そして大人の食事へと、飲み込み方、噛み方、箸や椀の持ち方使い方を練習していく。歩くことでも同じ。最初は歩くどころか、立てもしない。それが立てるようになり、最初の一歩が出るようになる。手を取ってもらい一歩ずつ、そして一人でよちよち歩きへ。転んでは立ち上がり、立ち上がっては転ぶ。そうしてやがては、走ることもできるようになる。

 できないところから、行動しては、うまくいかないところを修正し、それをできるようになるまで積み重ねる、それが人間の脳の学習の仕方である。

★失敗が人間を賢くする


 「本当は、失敗すると賢くなる」と脳科学者の池谷裕二氏は言う。脳は「ミスした方向には進まないように道を選ぶ性質がある」のだという。脳は失敗したくない。失敗は不快だからである。だから失敗すると、その失敗を修正しようという行動に出る。失敗した行動を避け、別の方法を選択するのだという。

 サルを使った実験によると、失敗したサルの方が記憶の定着が良いという。何回か修正行動がくりかえされるうちに成功する。その修正の過程が記憶されるからである。

 一回でできてしまったことが、その後練習しないでいて、つぎにやってみたらできなくなっていたということを経験したことがあるのではないか。それは、行動を成立させるための神経回路がしっかり成立していなかった、行動の記憶ができていなかったということである。
 行動を成立させるための神経回路をしっかりと成立させることによって、確実に「できる」ということになる。何度も何度も繰り返しやっていると、その分だけ回路に信号が通り、その刺激で軸索が太くなり、しっかりとした記憶回路が成立していく。軸索が太くなると信号も速く伝わる。始めやゆっくりしかできなかったことが、繰り返し練習することによって速くできるようになるというのはそういうことである。

 失敗の修正は、 脳の成長のプロセスと言いかえてもよいかもしれない。

 これまでの教育の方法は、正しい答えを教え、覚えさせるというのが主流であった。教育の効率が良いと考えられてきたからである。失敗させないようにする工夫もしてきた。しかし、脳の学習方法(記憶回路の成立の仕方)がわかってくると、それは考え直す必要があるように思われる。
 うまく失敗させて、それを修正させていく。失敗の要因が自覚できるように失敗させて、自分の行動を自覚的に修正させるようにする。そうすると、盲目的に正しいやり方を繰り返すより、早くできるようになる。それだけでなく、失敗しやすいところに気をつけてやるようになるので、確実に行動できるようになるのである。
  

★エジソンの言葉


 もう少し大きくとらえるならば、失敗を自覚させ、それを修正する方向や手段を見つけ出す、その試行錯誤こそが、人間の成長につながるとも言えよう。
 そういう意味では、うまくいかなかったことを失敗と考える姿勢がいけないとも言える。それは単にうまくいかなかっただけで、成功へのプロセスにすぎないのであるから。その意味で、発明王トーマス・エジソンのこの言葉は、珠玉の名言である。

  「私は失敗したことがない。ただ、一万通りのうまくいかない方法を見つけただけだ。」









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