2007/05/02

4 指示と指導−いかに相手の脳を働かせるか その1

 +1ずつでも毎日たしていけば、1年たつと+365になる。しかし、0ならば、1年たっても0のままである。逆に−1ならば、1年後には−365になり、+1ずつの場合とは730もの差がついてしまう。

 多くの人は人生の中で、それぞれ何らかの形で指導的立場にたつ。先輩として後輩に、上司として部下に、親として子に、そして教師として学習者に、行動のしかた,仕事のしかた,勉強のしかたをいろいろと指導する。相手に対して毎日毎日積み重ねていくその指導は、果たして相手を成長させる+1の指導になっているだろうか。
 相手を成長させる「+1」の指導となるか、単なる「指示」にとどまるか、逆に「成長の妨げ」となるか、そのポイントは、相手に対する働きかけが、いかに相手の脳を働かせるような行動になっているかというところにある。それは、私たちの脳の学習のしかたが「行動したことを学習する」 ということだからである。

 私たちの脳は、行動したときに働いた脳の働き方(神経回路への信号の伝わり方)を、行動のしかたの記憶として蓄積していくようになっている。 計算する能力は、計算行動をすることによって身につくのであり、計算式とその結果をただ覚えただけでは、計算はできるようにはならない。教師がやり方のモデルを示し、それにならって計算し、その結果を正しいものと比較し、まちがっていれば自分の行動を修正する。私たちが今、さまざまな計算ができるというのは、そうしたことを積み重ねてきたからなのである。

 つまり、相手に育てるべき行動をできるようにしてやるには、その行動を成立させるための脳の働き方を経験させてやらなければならないということである。指導的立場にあるものには、こうした脳行動学に基づく視点を持つことが、大変重要な課題であるといえよう。育てるべき相手の成長を大きく左右することになるからである。

▼あなたは、あなたが育てるべき相手の脳を働かせているか。
▼育てるべき相手に、目標や理念ばかり語っていないか。
▼考えたり決断している行動したのは、あなただけになっていないか。
▼わかりにくい指示で相手を混乱させたり、批判と叱責ばかりでやる気を失わせていないか。
▼その行動を成立させるための脳の働かせ方を、ちゃんと経験させているだろうか。

0 件のコメント: