2018/08/23

48 自由に研究しろと言われても・・・①

 夏休みになると、たいていどこかのTV局で、自由研究を取り上げる。
 何を研究するのか、どのように取り組むか、そしてどうまとめるか。
 子どもにとっても、親にとっても悩みの種であるからだろう。
 しかし、そうした中で、生き生きと研究する子どもたちもいる。
 8月17日のテレ朝のモーニングショーで、そうした子どもたちを紹介していた。
 その中の一人、虫好きの少年、西川君、中学1年生。
 西川君は「虫が集まるコンビニ、集まらないコンビニ」の研究をした。

それは、小さな「?」から始まった


 2015年夏のある夜、お父さんとコンビニに買い物に行き、出てきたら車にカミキリムシがついていた。西川君はうれしかった。そういえば、コンビニの周りには結構虫が集まっていたなあ。
 じゃあ、もう1軒行ってみよう。ところが次の店の周りには、虫は集まっていなかった。
 どうして虫が集まる店と、集まらない店があるんだろう???

 そしてそこからがすごい。周辺10キロ、39店舗のコンビニについて、立地条件など様々なことについて調べた。すると面白いことがわかった。
 虫の集まり方は、立地条件には関係がなく、虫が集まるのはサークルKサンクス。セブンイレブンには集まらない。その中間がローソンだ。そしてその理由をつきとめたのだ。

 虫の集まるサークルKと、集まらないセブンイレブンとでは、店の照明の色が違う気がした。そこで各店舗の写真を撮って、照明の色を比較したところ、サークルKが青っぽいのに対して、セブンイレブンは黄色っぽい。そしてローソンはその中間。虫が好む明かりの色があるらしい。
 西川君は、簡易分光器や特殊なフィルターを使って、店の明かりをしらべ、虫の好む光の波長を探り出したのだ。
 研究の成果はまとめて(A4版69ページにもなったそうだ)昆虫学会で発表、評判になったそうだ。


 

 研究する子どもが育つ環境


 西川君は現在高校1年生、やっぱり研究をしている。現在のテーマは「昆虫と光」「昆虫と匂い」。
(相変わらず、虫が好きなんだな~) 将来は昆虫の研究にかかわる仕事に就きたいと言っているそうだ。

 ふとした出来事や現象について疑問に思う子、疑問に思わない子
 そのことに興味を持つ子、持たない子
 疑問についてすぐ答えを聞く子、聞いて終わりにする子
 聞かないでそのまま終わりにする子
 
 子どもの疑問に対して「つまらないことを聞くんじゃない」という親
 「そんなこと自分で調べなさい」という親
 すぐ答えを教えてしまう親
 いろいろな子どもがいて、いろいろな親がいる。

 疑問を持ち、そのことに興味をいだく。そしてそのことについて調べ研究する。
 そうした子どもはどのような環境で育ってくるのだろうか。
 「コンビニ昆虫」の研究のとき、西川君の家では、お父さんは車の運転、お母さんは記録をとることに協力したという。どんな会話がなされたのだろうか。ちょっと想像してみた。

 〇▽$◆%〇▲▽&だったんだ。どうしてかなあ~
 「面白いことに気がついたね」
 「ほんと、どうしてかしらね」
 「どうしたら調べられると思うかい?」
 △▼◆%〇&$▽を比べてみたらどうかな~
 「うん、それはいいんじゃないか」
 「でも、夜は自転車じゃあ、危ないんじゃない?」
 「いくらも行けないしな。じゃあ、お父さんの車で行こう」
 「何だか面白そうね。私も行ってもいいかしら」


研究する子どもを育てるのは親の役目なの?


 番組では、自由研究において大切なのは「答えを教えるのではなく、サポートすることが大切」とまとめていた。子どもに対する親の姿勢ということだ。
 今は、研究する子どもが育つのは、家庭の環境だと考えられているのだ。

 しかし、ちょっと待て。もちろん親の姿勢も大切だ。
 でも、子どもの研究する姿勢を育てるのは、親の役目なの?
 じゃあ、学校は何を育てているんだろう。

(以下次稿)


 




 

 
 

2018/08/21

47 「を」でなくて「から」・・・香川照之の昆虫すごいぜ

 久々に「これはおもしろい」と思う教育番組に出会った。
 EテレことNHK教育TVの『香川照之の昆虫すごいぜ』である。
 俳優であり歌舞伎役者でもある香川照之さんが、メインキャラクターのカマキリ先生に扮し、授業という名目で、昆虫の生態、昆虫の能力に迫る番組である。
 昆虫愛に満ち満ちた香川さんが、民法のトーク番組で、カマキリの着ぐるみで登場、「カマキリ先生」に扮して昆虫に関する授業を行い、その中で「Eテレで昆虫番組をやるのが夢」と発言。それをたまたまNHKのプロデューサーが見ていて、ひょうたんから駒のように実現したというエピソードつきの番組だ。



 番組がスタートしたのは、もう2年も前のこと。
 第1回は2016年の10月で、数カ月に1回、不定期に放送されている。
 1時間目はトノサマバッタとクマゼミ。2時間目はモンシロチョウにタガメ。
 3時間目はオニヤンマで、2時間目と3時間目の間に、特別編「出動タガメ捜査一課」が放送された。

 私がこの番組に出会ったのは、昨年の暮れ。レギュラー番組が休止し、年末の特別な番組編成の一角に、この番組の再放送が組み込まれていたのである。1時間目と2時間目は見逃し、3時間目と特別編を見た。
 番組の半分は、カマキリ先生が野外に出て、実際にその昆虫を捕獲する場面だ。ヤラセは一切ないそうで、失敗する場面も全公開。

 3時間目はトンボ、その中でも最大で最強というオニヤンマを追う。どのくらい強いかというと、あの強力なスズメバチを捕食するという。逆ににスズメバチもオニヤンマを捕食するという。オニヤンマとスズメバチとは永遠のライバルであるという。こういう切り口もわくわくする。
 そして早速、カマキリ先生によるオニヤンマ捕獲作戦。トンボは、水があって森があるところにいる。オニヤンマはその中でもゆるやか流れの小川の周辺を飛んでいるという。

 「僕がとんぼなら、こういうところに住みたくなっちゃう」などといいながら、カマキリ先生は捕獲にとりくむが、最初のうちは失敗続きで、「初動が遅いんだよ」などと自分にダメ出し。
 「でも、オニヤンマはパトロール体質だから、絶対戻ってくる」と捕獲作戦変更。

 トンボはメスが稀少で、オスはいかにメスを獲得するかに命を懸けるという。オニヤンマのオスは小川を中央にした周回コースをとり、そこを高速(時速60㎞以上だという)でぐるぐるまわり、メスがやってくるのをひたすら待つという。
 カマキリ先生はそのコースの一角に陣取って待つことにしたのだ。
 そして、オニヤンマをつぎつぎと発見、あざやかな網さばきで捕獲していく。
 (3時間で9匹をゲット、これはすごいことらしい。ただし、全部オスだけ。)

 
 


 先生はつかまえたオニヤンマをカメラに近づけ、姿かたちがよくみえるようにする。
 


 番組ではさらにメスとオスのちがいや、大きなあごでハエを食べるところを画像で見せる。
 また、トンボの飛び方の特徴の一つであるホバーリングの観察もする。オスの周回コースに扇風機を置き、飛んでくるのを待つ。やってきたオスは、扇風機の回転音をメスの羽音と思い、近くまで来たところでホバーリングする。
 番組では、そのホバーリング中の羽の動きを微速度映像で見せる。4枚の羽根を別々に高速度回転させている。このような高度に複雑な飛行ができるのはトンボだけだという。
 下の写真は、少し見にくいが、ホバーリング中の羽の動きの微速度映像の1カット。

(と書いたら身近にいる映像制作者から、これは高速度撮影と言うんだとクレームがついた。それはわかっています。高速度で撮影したものを、目で見えるような微速度の映像にして見せているという意味で書いていると言っても、理解してもらえなかった。 
 ちょっと話が、番組からそれました。忘れてください。話を戻します。)





 帰りがけに、子どもの時からのあこがれだったギンヤンマを見つけてしまったカマキリ先生、その捕獲を試みる。
 オニヤンマ以上に速い時速70㎞以上で飛び、しかも急旋回するというギンヤンマ、今まで一度も捕まえたことのないギンヤンマ。それを後ろからねらって見事ゲットし、興奮するカマキリ先生。



 そして圧巻は、カマキリ先生が、昆虫の能力を自分のからだで感じてみようという実験だ。この企画は、毎回あるらしく、この回の場合は、ギンヤンマが飛ぶ時速70㎞と急旋回の体感だ。
 時速70㎞で車を走らせ(運転手はスタントドライバー)、そのスピードのまま急旋回する。
 からだにGがかかる。前方の景色がものすごいスピードで展開する。眼がついていけない。身体がついていけない。

 つぎに体感するのは、ギンヤンマの捕獲能力。時速70㎞で飛びつつ虫をキャッチする。
 カマキリ先生を70㎞で飛ばすことはできないので、クレーンでつり上げたかマキリ先生めがけて、時速70㎞の速度でバレーボールを飛ばす。何回目かに受け止めたカマキリ先生、受けられるかどうかは方向がカギという。しかし、トンボは自ら飛んでいる虫に向かって行き、捕獲するのだ。やはりトンボはすごい。

 番組の最後は、カマキリ先生の熱いメッセージで終わる。
  「トンボは自分の力だけで時速70㎞で飛ぶのだ!」
  「君たちもギンヤンマのように飛びたいと思わないか!」
  「君たちも羽を持っているはずだ。羽があるのに飛ばないやつはだめだ!」
  「飛んでください!」

 何かを覚える番組ではない。
 知らなかった昆虫たちの生態に興味をもち、その能力に驚き、昆虫たちに尊敬の念すら生み出す。そしてほかの昆虫たちはどうなんだろうと、興味がわく。不思議な番組だ。
 「昆虫を学ぶ」のではなく、「昆虫から」学ぶのだ。
 
 番組は、今後も続くらしい。この夏にもやったらしい。
 私は見逃してしまったが、きっとまた再放送でやるだろう。

★3時間目、オニヤンマの回は、下記のURLで見ることができる。(削除されなければ)