2018/11/04

《 投稿一覧 》

≪≪≪≪≪   2018年   ≫≫≫≫≫
  49.自由に研究しろと言われても・・・②
  48.自由に研究しろと言われても・・・①
  47.「を」ではなくて「から」・・・香川照之の昆虫すごいぜ

≪≪≪≪≪   2017年   ≫≫≫≫≫
  46.見つけた! 朝顔観察の面白さ
  45.夏休み定番の宿題、朝顔の観察  
  44.三階席から見た吹奏楽
  43.ドクターG、腰痛の真の原因を突き止める(後編)  
  42.ドクターG、腰痛の真の原因を突き止める 
  41.葵の上はなぜ死んだのか 
  40.学びて思わざれば即ち罔し
  39.指示待ちから脱出させるには

≪≪≪≪≪   2016年   ≫≫≫≫≫
  38.三人の大学教授の話
  37.親の役目
  36.運動の法則―長く続かせるための3か条
  35.まず、やると決める―緒方貞子さんの行動のしかた
  34.相手が変わらないのは自分のせいだと思った方がよい
  33.失敗を修正することによってしか、できるようにならない
  ★  7年ぶりです。再開します。
  
≪≪≪≪≪   2009年   ≫≫≫≫≫
  32.失敗2題 
  31.集中と繰り返し
  30.冷静に対応する

≪≪≪≪≪   2008年   ≫≫≫≫≫
  29.失敗の修正・克服によって成長する
  28.成長する組織の条件
  27.「なのに」と「だから」 その2
  26.「なのに」と「だから」
  25.千回の素振りか、あれやこれやの10回か
  24.併行学習
  23.いじめについて
  22.本当は30歳過ぎると賢くなる その2
  21.本当は30歳過ぎると賢くなる
  20.「口中調味」ができますか?
  19.学習時間と学習効果
  18.荒川静香さんの授業
  17.脳が意欲的に働く条件

≪≪≪≪≪   2007年   ≫≫≫≫≫
  16.「わかったか」と聞くときの心構え 
  15.わかるということ
  14.「わかるとできる」ではなく「できるとわかる」
  13.試行錯誤の脳行動学的意味
  12.「木と相談してやりなはれ」
  11.頭をよくするとはどういうことか
  10.脳は単純記憶が苦手
   9.グループ学習の脳行動学的意味
   8.長く見る、じっと見る
   7.20%の授業
   6.「失敗から学ぶ力」を育てる
   5.指示と指導 2
   4.指示と指導 1
   3.ビールは23歳で好きになる
   2.教えない方が選手は伸びる
   1.行動の単純化が脳の力を衰えさせる
   
   
   
   
   
   
   
   
  
  
  
  
  
  
  

49 自由に研究しろと言われても・・・②


★70%の親子が自由研究で悩んでいる 


 ベネッセ教育研究所の調査によれば、小学生を持つ家庭の70%が、夏休みの自由研究に悩んでいるという。
 自由研究であるのだから、当然学校では自由研究の指導は行わない。子どもの自由な発想と、何にもとらわれない方法で研究するのが建前である。何の縛りもない。何でも研究したいことを、好きな方法で研究すればよいのである。
 ところが、その自由研究に、70%の親子が悩んでいるというのである。

 そもそも、夏休みの自由研究のテーマが浮かばない。調べたいことがないのだ。
 そして、調べ方が思いつかない。どうやってよいのかわからない。
 子どもに泣きつかれて、親子で悩んでしまう。
 楽しいはずの夏休み、いったい何故こんなことが起こるのか。


★自由研究ができないのは、学校のせい


 結論から言うと、これは、学校でこどもの「研究力」を育てていないからである。

 今の学校では、整理された知識を教えることが中心になっている。
 多くのことについて「知っている子ども」を育てているということだ。
 そして、その教育の方向を正しい、と親も考えている。
 中学へ進む、高校に進むための試験に通らなけれなばらないからだ。
 子どもの疑問を引出し、興味を持たせ、考えさせるなどということをしている暇がないのだ。
 
 しかし、知識を詰め込むことにばかり頭を使っていると、不思議なことにも疑問もいだかず、いろいろなことに興味を持たない脳が出来上がってしまうのだ。

 

★脳本来の働き方は、探究的


 幼い子どもが、大人につぎつぎと「あれなあに?」「これなあに?」「ねえどうして?」「なんで?」と質問しているのを見たことがあるだろう。自分の経験として持っている人も多いことだろう。
 本来、子どもの脳(人間の脳というべきかもしれない)は、そう働くものだ。わからないこと、知らないこと、不思議なことを探究しようとするのである。自分を取り巻く環境が安全かどうかを調べるための本能的なはたらきだと言われている。

 その働きを抑えてしまっているのが、大人(親)であり、学校だと言えるだろう。
 「うるさいわね、だまってなさい」「今忙しいんだ」と子供の疑問を押しつぶし、学校の勉強以外に関心を持つと、「そんなことをやっている暇があれば勉強をしろ」「いつ勉強するのか。今でしょ!」と追い込むのである。


★知識の詰め込み型学習をしていると・・・


 試験のためにバラバラに詰め込んだ知識は、そのあとほとんど使われない。そして大半は数年、早ければ数カ月もたてば忘れてしまう。それに忘れてしまっても、何のさしつかえもない、そういう知識だ。
 しかしさしつかえるのは、脳の働き方が変わるということだ。主体的に考えることなく、ひたすら教えられたことを覚えるというような行動の仕方をしていると、そういう行動の仕方しかできない脳になってしまうのだ。

 しばらく前に、こんなコマーシャルがあった。
 新入社員らしい女性が、先輩に怒鳴られ怒鳴られ、落ち込みながら仕事をする映像に、次のようなナレーションが重なる。
 「学校では、余計なことを考えるな、言われたとおりに勉強しろと言われた。会社に入ったら、そんなことを人に聞くな、自分で考えろ、と怒られる・・・」
 何のコマーシャルだったのか覚えていないのだが、これは笑えない事実だ。

 

★生きる力を育てるための学校なのだから


 こう考えてくると、現在の夏休みの自由研究の位置づけそのものがおかしい。
 学校の普段の授業では知識を詰め込み、いっぱいいっぱいにしておいて、さあ夏休みです、自由に考え研究してくださいと言って、放り出す。
 日頃から学校の勉強ばかりにとらわれず、本能のままに疑問を追究している子どもはやっていけるかもしれないが、まじめに、知識を詰め込むばかりの勉強をしてきた子どもは、急に違うことを要求されて困ってしまうのだ。

 子どもたちがいずれ出ていくことになる社会、仕事の場には、初めから決まった答えがあるわけではない。観察、予測、実験、結果の分析、修正、そうしたことの連続であり積み重ねである。主体的で、研究的な行動の仕方こそ力となる。
 さまざまなことがらに対し、子どもに興味を持たせ、疑問を引き出し、考えさせ、調べさせる、そうした姿勢と方法を育ててやることこそ、学校の役目ではないのか。
 
 子どもが自分の力で、自信を持って生きていく力を育てることこそ、教育の本当の目標だと思う。
 夏休みの自由研究の責任を家庭に押し付けるのではなく、普段の授業こそを、子どもの研究心を育てるものに切り替える必要があるということだろう。

2018/08/23

48 自由に研究しろと言われても・・・①

 夏休みになると、たいていどこかのTV局で、自由研究を取り上げる。
 何を研究するのか、どのように取り組むか、そしてどうまとめるか。
 子どもにとっても、親にとっても悩みの種であるからだろう。
 しかし、そうした中で、生き生きと研究する子どもたちもいる。
 8月17日のテレ朝のモーニングショーで、そうした子どもたちを紹介していた。
 その中の一人、虫好きの少年、西川君、中学1年生。
 西川君は「虫が集まるコンビニ、集まらないコンビニ」の研究をした。

それは、小さな「?」から始まった


 2015年夏のある夜、お父さんとコンビニに買い物に行き、出てきたら車にカミキリムシがついていた。西川君はうれしかった。そういえば、コンビニの周りには結構虫が集まっていたなあ。
 じゃあ、もう1軒行ってみよう。ところが次の店の周りには、虫は集まっていなかった。
 どうして虫が集まる店と、集まらない店があるんだろう???

 そしてそこからがすごい。周辺10キロ、39店舗のコンビニについて、立地条件など様々なことについて調べた。すると面白いことがわかった。
 虫の集まり方は、立地条件には関係がなく、虫が集まるのはサークルKサンクス。セブンイレブンには集まらない。その中間がローソンだ。そしてその理由をつきとめたのだ。

 虫の集まるサークルKと、集まらないセブンイレブンとでは、店の照明の色が違う気がした。そこで各店舗の写真を撮って、照明の色を比較したところ、サークルKが青っぽいのに対して、セブンイレブンは黄色っぽい。そしてローソンはその中間。虫が好む明かりの色があるらしい。
 西川君は、簡易分光器や特殊なフィルターを使って、店の明かりをしらべ、虫の好む光の波長を探り出したのだ。
 研究の成果はまとめて(A4版69ページにもなったそうだ)昆虫学会で発表、評判になったそうだ。


 

 研究する子どもが育つ環境


 西川君は現在高校1年生、やっぱり研究をしている。現在のテーマは「昆虫と光」「昆虫と匂い」。
(相変わらず、虫が好きなんだな~) 将来は昆虫の研究にかかわる仕事に就きたいと言っているそうだ。

 ふとした出来事や現象について疑問に思う子、疑問に思わない子
 そのことに興味を持つ子、持たない子
 疑問についてすぐ答えを聞く子、聞いて終わりにする子
 聞かないでそのまま終わりにする子
 
 子どもの疑問に対して「つまらないことを聞くんじゃない」という親
 「そんなこと自分で調べなさい」という親
 すぐ答えを教えてしまう親
 いろいろな子どもがいて、いろいろな親がいる。

 疑問を持ち、そのことに興味をいだく。そしてそのことについて調べ研究する。
 そうした子どもはどのような環境で育ってくるのだろうか。
 「コンビニ昆虫」の研究のとき、西川君の家では、お父さんは車の運転、お母さんは記録をとることに協力したという。どんな会話がなされたのだろうか。ちょっと想像してみた。

 〇▽$◆%〇▲▽&だったんだ。どうしてかなあ~
 「面白いことに気がついたね」
 「ほんと、どうしてかしらね」
 「どうしたら調べられると思うかい?」
 △▼◆%〇&$▽を比べてみたらどうかな~
 「うん、それはいいんじゃないか」
 「でも、夜は自転車じゃあ、危ないんじゃない?」
 「いくらも行けないしな。じゃあ、お父さんの車で行こう」
 「何だか面白そうね。私も行ってもいいかしら」


研究する子どもを育てるのは親の役目なの?


 番組では、自由研究において大切なのは「答えを教えるのではなく、サポートすることが大切」とまとめていた。子どもに対する親の姿勢ということだ。
 今は、研究する子どもが育つのは、家庭の環境だと考えられているのだ。

 しかし、ちょっと待て。もちろん親の姿勢も大切だ。
 でも、子どもの研究する姿勢を育てるのは、親の役目なの?
 じゃあ、学校は何を育てているんだろう。

(以下次稿)


 




 

 
 

2018/08/21

47 「を」でなくて「から」・・・香川照之の昆虫すごいぜ

 久々に「これはおもしろい」と思う教育番組に出会った。
 EテレことNHK教育TVの『香川照之の昆虫すごいぜ』である。
 俳優であり歌舞伎役者でもある香川照之さんが、メインキャラクターのカマキリ先生に扮し、授業という名目で、昆虫の生態、昆虫の能力に迫る番組である。
 昆虫愛に満ち満ちた香川さんが、民法のトーク番組で、カマキリの着ぐるみで登場、「カマキリ先生」に扮して昆虫に関する授業を行い、その中で「Eテレで昆虫番組をやるのが夢」と発言。それをたまたまNHKのプロデューサーが見ていて、ひょうたんから駒のように実現したというエピソードつきの番組だ。



 番組がスタートしたのは、もう2年も前のこと。
 第1回は2016年の10月で、数カ月に1回、不定期に放送されている。
 1時間目はトノサマバッタとクマゼミ。2時間目はモンシロチョウにタガメ。
 3時間目はオニヤンマで、2時間目と3時間目の間に、特別編「出動タガメ捜査一課」が放送された。

 私がこの番組に出会ったのは、昨年の暮れ。レギュラー番組が休止し、年末の特別な番組編成の一角に、この番組の再放送が組み込まれていたのである。1時間目と2時間目は見逃し、3時間目と特別編を見た。
 番組の半分は、カマキリ先生が野外に出て、実際にその昆虫を捕獲する場面だ。ヤラセは一切ないそうで、失敗する場面も全公開。

 3時間目はトンボ、その中でも最大で最強というオニヤンマを追う。どのくらい強いかというと、あの強力なスズメバチを捕食するという。逆ににスズメバチもオニヤンマを捕食するという。オニヤンマとスズメバチとは永遠のライバルであるという。こういう切り口もわくわくする。
 そして早速、カマキリ先生によるオニヤンマ捕獲作戦。トンボは、水があって森があるところにいる。オニヤンマはその中でもゆるやか流れの小川の周辺を飛んでいるという。

 「僕がとんぼなら、こういうところに住みたくなっちゃう」などといいながら、カマキリ先生は捕獲にとりくむが、最初のうちは失敗続きで、「初動が遅いんだよ」などと自分にダメ出し。
 「でも、オニヤンマはパトロール体質だから、絶対戻ってくる」と捕獲作戦変更。

 トンボはメスが稀少で、オスはいかにメスを獲得するかに命を懸けるという。オニヤンマのオスは小川を中央にした周回コースをとり、そこを高速(時速60㎞以上だという)でぐるぐるまわり、メスがやってくるのをひたすら待つという。
 カマキリ先生はそのコースの一角に陣取って待つことにしたのだ。
 そして、オニヤンマをつぎつぎと発見、あざやかな網さばきで捕獲していく。
 (3時間で9匹をゲット、これはすごいことらしい。ただし、全部オスだけ。)

 
 


 先生はつかまえたオニヤンマをカメラに近づけ、姿かたちがよくみえるようにする。
 


 番組ではさらにメスとオスのちがいや、大きなあごでハエを食べるところを画像で見せる。
 また、トンボの飛び方の特徴の一つであるホバーリングの観察もする。オスの周回コースに扇風機を置き、飛んでくるのを待つ。やってきたオスは、扇風機の回転音をメスの羽音と思い、近くまで来たところでホバーリングする。
 番組では、そのホバーリング中の羽の動きを微速度映像で見せる。4枚の羽根を別々に高速度回転させている。このような高度に複雑な飛行ができるのはトンボだけだという。
 下の写真は、少し見にくいが、ホバーリング中の羽の動きの微速度映像の1カット。

(と書いたら身近にいる映像制作者から、これは高速度撮影と言うんだとクレームがついた。それはわかっています。高速度で撮影したものを、目で見えるような微速度の映像にして見せているという意味で書いていると言っても、理解してもらえなかった。 
 ちょっと話が、番組からそれました。忘れてください。話を戻します。)





 帰りがけに、子どもの時からのあこがれだったギンヤンマを見つけてしまったカマキリ先生、その捕獲を試みる。
 オニヤンマ以上に速い時速70㎞以上で飛び、しかも急旋回するというギンヤンマ、今まで一度も捕まえたことのないギンヤンマ。それを後ろからねらって見事ゲットし、興奮するカマキリ先生。



 そして圧巻は、カマキリ先生が、昆虫の能力を自分のからだで感じてみようという実験だ。この企画は、毎回あるらしく、この回の場合は、ギンヤンマが飛ぶ時速70㎞と急旋回の体感だ。
 時速70㎞で車を走らせ(運転手はスタントドライバー)、そのスピードのまま急旋回する。
 からだにGがかかる。前方の景色がものすごいスピードで展開する。眼がついていけない。身体がついていけない。

 つぎに体感するのは、ギンヤンマの捕獲能力。時速70㎞で飛びつつ虫をキャッチする。
 カマキリ先生を70㎞で飛ばすことはできないので、クレーンでつり上げたかマキリ先生めがけて、時速70㎞の速度でバレーボールを飛ばす。何回目かに受け止めたカマキリ先生、受けられるかどうかは方向がカギという。しかし、トンボは自ら飛んでいる虫に向かって行き、捕獲するのだ。やはりトンボはすごい。

 番組の最後は、カマキリ先生の熱いメッセージで終わる。
  「トンボは自分の力だけで時速70㎞で飛ぶのだ!」
  「君たちもギンヤンマのように飛びたいと思わないか!」
  「君たちも羽を持っているはずだ。羽があるのに飛ばないやつはだめだ!」
  「飛んでください!」

 何かを覚える番組ではない。
 知らなかった昆虫たちの生態に興味をもち、その能力に驚き、昆虫たちに尊敬の念すら生み出す。そしてほかの昆虫たちはどうなんだろうと、興味がわく。不思議な番組だ。
 「昆虫を学ぶ」のではなく、「昆虫から」学ぶのだ。
 
 番組は、今後も続くらしい。この夏にもやったらしい。
 私は見逃してしまったが、きっとまた再放送でやるだろう。

★3時間目、オニヤンマの回は、下記のURLで見ることができる。(削除されなければ)