2018/08/21

47 「を」でなくて「から」・・・香川照之の昆虫すごいぜ

 久々に「これはおもしろい」と思う教育番組に出会った。
 EテレことNHK教育TVの『香川照之の昆虫すごいぜ』である。
 俳優であり歌舞伎役者でもある香川照之さんが、メインキャラクターのカマキリ先生に扮し、授業という名目で、昆虫の生態、昆虫の能力に迫る番組である。
 昆虫愛に満ち満ちた香川さんが、民法のトーク番組で、カマキリの着ぐるみで登場、「カマキリ先生」に扮して昆虫に関する授業を行い、その中で「Eテレで昆虫番組をやるのが夢」と発言。それをたまたまNHKのプロデューサーが見ていて、ひょうたんから駒のように実現したというエピソードつきの番組だ。



 番組がスタートしたのは、もう2年も前のこと。
 第1回は2016年の10月で、数カ月に1回、不定期に放送されている。
 1時間目はトノサマバッタとクマゼミ。2時間目はモンシロチョウにタガメ。
 3時間目はオニヤンマで、2時間目と3時間目の間に、特別編「出動タガメ捜査一課」が放送された。

 私がこの番組に出会ったのは、昨年の暮れ。レギュラー番組が休止し、年末の特別な番組編成の一角に、この番組の再放送が組み込まれていたのである。1時間目と2時間目は見逃し、3時間目と特別編を見た。
 番組の半分は、カマキリ先生が野外に出て、実際にその昆虫を捕獲する場面だ。ヤラセは一切ないそうで、失敗する場面も全公開。

 3時間目はトンボ、その中でも最大で最強というオニヤンマを追う。どのくらい強いかというと、あの強力なスズメバチを捕食するという。逆ににスズメバチもオニヤンマを捕食するという。オニヤンマとスズメバチとは永遠のライバルであるという。こういう切り口もわくわくする。
 そして早速、カマキリ先生によるオニヤンマ捕獲作戦。トンボは、水があって森があるところにいる。オニヤンマはその中でもゆるやか流れの小川の周辺を飛んでいるという。

 「僕がとんぼなら、こういうところに住みたくなっちゃう」などといいながら、カマキリ先生は捕獲にとりくむが、最初のうちは失敗続きで、「初動が遅いんだよ」などと自分にダメ出し。
 「でも、オニヤンマはパトロール体質だから、絶対戻ってくる」と捕獲作戦変更。

 トンボはメスが稀少で、オスはいかにメスを獲得するかに命を懸けるという。オニヤンマのオスは小川を中央にした周回コースをとり、そこを高速(時速60㎞以上だという)でぐるぐるまわり、メスがやってくるのをひたすら待つという。
 カマキリ先生はそのコースの一角に陣取って待つことにしたのだ。
 そして、オニヤンマをつぎつぎと発見、あざやかな網さばきで捕獲していく。
 (3時間で9匹をゲット、これはすごいことらしい。ただし、全部オスだけ。)

 
 


 先生はつかまえたオニヤンマをカメラに近づけ、姿かたちがよくみえるようにする。
 


 番組ではさらにメスとオスのちがいや、大きなあごでハエを食べるところを画像で見せる。
 また、トンボの飛び方の特徴の一つであるホバーリングの観察もする。オスの周回コースに扇風機を置き、飛んでくるのを待つ。やってきたオスは、扇風機の回転音をメスの羽音と思い、近くまで来たところでホバーリングする。
 番組では、そのホバーリング中の羽の動きを微速度映像で見せる。4枚の羽根を別々に高速度回転させている。このような高度に複雑な飛行ができるのはトンボだけだという。
 下の写真は、少し見にくいが、ホバーリング中の羽の動きの微速度映像の1カット。

(と書いたら身近にいる映像制作者から、これは高速度撮影と言うんだとクレームがついた。それはわかっています。高速度で撮影したものを、目で見えるような微速度の映像にして見せているという意味で書いていると言っても、理解してもらえなかった。 
 ちょっと話が、番組からそれました。忘れてください。話を戻します。)





 帰りがけに、子どもの時からのあこがれだったギンヤンマを見つけてしまったカマキリ先生、その捕獲を試みる。
 オニヤンマ以上に速い時速70㎞以上で飛び、しかも急旋回するというギンヤンマ、今まで一度も捕まえたことのないギンヤンマ。それを後ろからねらって見事ゲットし、興奮するカマキリ先生。



 そして圧巻は、カマキリ先生が、昆虫の能力を自分のからだで感じてみようという実験だ。この企画は、毎回あるらしく、この回の場合は、ギンヤンマが飛ぶ時速70㎞と急旋回の体感だ。
 時速70㎞で車を走らせ(運転手はスタントドライバー)、そのスピードのまま急旋回する。
 からだにGがかかる。前方の景色がものすごいスピードで展開する。眼がついていけない。身体がついていけない。

 つぎに体感するのは、ギンヤンマの捕獲能力。時速70㎞で飛びつつ虫をキャッチする。
 カマキリ先生を70㎞で飛ばすことはできないので、クレーンでつり上げたかマキリ先生めがけて、時速70㎞の速度でバレーボールを飛ばす。何回目かに受け止めたカマキリ先生、受けられるかどうかは方向がカギという。しかし、トンボは自ら飛んでいる虫に向かって行き、捕獲するのだ。やはりトンボはすごい。

 番組の最後は、カマキリ先生の熱いメッセージで終わる。
  「トンボは自分の力だけで時速70㎞で飛ぶのだ!」
  「君たちもギンヤンマのように飛びたいと思わないか!」
  「君たちも羽を持っているはずだ。羽があるのに飛ばないやつはだめだ!」
  「飛んでください!」

 何かを覚える番組ではない。
 知らなかった昆虫たちの生態に興味をもち、その能力に驚き、昆虫たちに尊敬の念すら生み出す。そしてほかの昆虫たちはどうなんだろうと、興味がわく。不思議な番組だ。
 「昆虫を学ぶ」のではなく、「昆虫から」学ぶのだ。
 
 番組は、今後も続くらしい。この夏にもやったらしい。
 私は見逃してしまったが、きっとまた再放送でやるだろう。

★3時間目、オニヤンマの回は、下記のURLで見ることができる。(削除されなければ)